2017.05.13 #People

『伝統を超えた新しい音楽の創造を!』〜世界の人々の心に火を付ける、篠笛奏者 狩野泰一の挑戦〜

狩野 泰一(篠笛奏者、篠笛講師、音楽プロデューサー)

耳は最初に出来、最後まで残る器官と言われ、音のない空間は無い程、私たちは音に囲まれ影響を受け、生活をしています。そして、古より音楽は言葉や国境を越え、世界を繋げ笑顔を産みだしてきました。

世界で活躍する佐渡の太鼓芸能集団「鼓童」の元メンバーでもあり、天皇皇后両陛下の御前演奏、世界30カ国で2000回を越える公演や、篠笛講師として世界でワークショップを行い、篠笛の新たな世界を展開している第一人者 狩野泰一さんに、活動の根源となる想いや音楽の効果をお伺いしました。


日本で生まれ育った唯一の楽器、篠笛




「篠笛とは、篠竹に穴を開けたシンプルな日本の横笛の総称です。昔から日本各地の祭り、獅子舞、神楽などの民俗芸能をはじめ、民謡、長唄など様々な音楽に使われている、日本人にとって一番身近なメロディー楽器です。自然の篠竹に穴を開けた篠笛の音は、人を癒す効果があるようで、私の音楽を聞くようになってから、長年飲んでいた安定剤や睡眠薬がいらなくなったという方もいらっしゃいます。」

私たちは日々沢山の音、音楽を聴いていますが、そのほとんどの音は機械による打ち込みで作られ、12平均律に調律された音楽なのだそう。

「日本古来の音楽や、アジア、インド、中近東、アフリカなど世界の民俗音楽は多彩な音程を持っていますが、今の日本は欧米の音楽の影響で12平均律が当たり前となり、それを聞きなれた人々は、12平均律以外の音は音痴に聞こえてしまう。本来は12平均律の半音の間にも無限の音があり、篠笛ではその微妙な音程や音色、響き、掠れ等を繊細に表現しています。しかし、現代の人々の耳にはその繊細な音色が届いていないのでは。」

古くは、命を守るため遠くの音さえ聞き取ることの出来た聴覚は、騒音の多い現代の生活に合わせ、その機能を退化させています。イヤホン、ヘッドホンの使用で、聴力はさらに落ちている。そして、無音から自由に音楽を創っていくという人間の想像力も弱まっているのかもしれません。


伝統から学び、人生をかけて自分の音楽を作れ




「2013年より事務所から離れて個人で活動をしていますが、ファンや弟子達がコンサートを主催してくれたり、篠笛を教えに来てほしいと呼んでくださり、丁寧に自分の出来ることをやっていたら、日本中、世界中にファンや弟子達が増えています。今はシンガポールとオーストラリアのメルボルン、シドニー、ブリスベン、ゴールドコースト等で毎年、公演とワークショップを開催し、現地のミュージシャンとのコラボも深めています。ありがたく、楽しい展開です。」

そこで狩野さんがやりたいと思ったのは、現地ミュージシャンの技術、意識のアップとオリジナリティーの創造。

「海外だと、日本的な事をするだけで受けるかもしれないけれど、日本人が見て、聞いて、納得することをして欲しい。私が持っている技術、演出法はいくらでも教えるから、私達が作ったもの、先人達が作ったものとは違うオリジナルなものを産み出して欲しい。海外でそこそこ日本の音楽が演奏できます、そんなんで一生を終えていいんですか?それより、日本が驚くような、あなたたちの独自の音楽を創ろうよ、と。」

本物の音楽を創り、人のクリエイティビティを刺激する狩野さんの想いで、人が変わり、素晴らしい音に触発されて全体が向上する。

「いつもチケットを買っていらしていたお客様が、私が演出した公演を見て感動し、ブラボー!と立ち上がって拍手をしている。海外で太鼓や三味線、箏、日本舞踊等をしている方々に呼んでいただき、一緒に楽しみながらレベルアップをしています。現地の他の要素も加えて、よりオリジナルで面白い公演を目指します。リハではすごく厳しいことを言って、素晴しいコンサートを成し遂げた後に、めちゃくちゃ褒めるんです。みんな感動して泣いちゃう。そうやって人の心に火をつけ、みんなが成長して行くのを見るるのがとても楽しいんです。」

現地の方々もレベルが上がり、ステップアップできて嬉しいと毎年呼んでくださるそうです。


心に火を付ける音楽を、後世に残る新しい音楽の伝統を




「私の笛と、あなたたちの国の、あなたたちの個性を使って、もっとユニークな新しいステージングをしよう、といつも言っています。ただ日本の文化を海外に伝えるのではなく、日本の先輩達が作ってきた素晴らしいエッセンスと、彼らのオリジナリティーを融合させ、毎年新しい音楽を一緒に作っていく。自然にそういう展開になっています。それはとても面白く、意味のある事だと思います。」

狩野さんのコンサートにも、音楽を聴くと何か行動したくなる、何か自分も表現したくなる、そんな心に火を付ける力があると思います。

「聞いてくださった方にプラスの何かが起こらなければ、意味がないですよね。お金を払っても、それ以上の何かを貰えるからお客様がコンサートに来てくださる。いつも、そうでありたいと思っています。そして、以前は自分の音楽活動に集中し、教えることにエネルギーを使いたくなかった。でも今は、教えることで自分のやって来た事を再認識し、自分の技術も上がり、素敵な弟子達が各地に増え、絆も深まって本当に楽しいんです。自分が身につけた事を人に、後世に伝えるのは、大切なライフワークだと思っています。」

狩野さんの意識が変わったのは、篠笛奏者の若い世代の方たちが、狩野さんを尊敬していることに気付いたからだそう。狩野さんのCDを聴いて感動し篠笛を始めた方は多く、狩野さんのDVDで練習し、プロになった人もいるそうです。

「ミスター マイルス・デイヴィスや宮城道夫先生みたいに、音楽の歴史を変えるような活動をしたい。そして、いい仕事、いい音楽、いい人材を後世に残したいと、思うようになりました。」

ストイックに自分と音楽に向き合い、人生をかけて篠笛や音楽を極めている狩野さんだからこそ持っている、心に火をつけ、人を動かしてしまうエネルギー。人の想像力を刺激し、可能性を引き出し、厳しくも今の限界を超えさせてしまう。その先には今まで経験したことのない喜びが待っている。そんな狩野さんの活動は、さらに世界に広がっています。


聞き流して心地よく、良く聞くと深い。そんなCDができました




狩野さんの一番やりたいこと、日本の笛のジャパニーズジャズ。そんな想いから生まれた最新アルバム『SOUND OF THE WIND』が、2017年3月8日にヤマハから発売されました。日本最高峰のミュージシャンが集まり、日本の名曲、世界のスタンダードナンバー、オリジナル曲を、自由自在に歌い、うねり、展開しています。

「4人で自由に演奏した曲を一発撮りし、修正はほとんど加えていません。第一線で活躍しているミュージシャン達が、エゴを抑え、必要最小限の音で会話をしながら演奏をしているから、何度聞いても飽きないんじゃないかな。聞き流して心地よく、良く聞くと深い。そんなCDができました。」

リリースを記念して、CD『SOUND OF THE WIND』発売記念コンサート含め、東北ツアーが5、6月に開催されます。

5/16(火) 音屋ホールオープン1周年記念『WA-OTO コンサート』@音屋ホール
6/12(月)『SOUND OF THE WIND/狩野泰一(篠笛) with 林正樹(p)』@仙台市 JAZZ ME BLUES noLa
6/13(火)『SOUND OF THE WIND/狩野泰一(篠笛) with 林正樹(p)』@盛岡市 すぺいん倶楽部
6/18(日)『狩野泰一(篠笛) with 宮本貴奈(p) コンサート』@青森市 リンクモア平安閣市民ホール
>> コンサートのスケジュールはこちら

この機会にぜひ、狩野さんの音楽に触れてみてはいかがでしょうか。


コラム第二弾は「日本の祭りの復興させる、篠笛奏者 狩野泰一の挑戦」を掲載いたします。
お楽しみに!



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